・・・と言っても、BMWのちょっと特殊なウインカースイッチをご存知ない人には意味不明でしょうから、まずその説明から。(^^;
私の R1200GS (2008年型)に限らず、BMWバイクでは長年にわたり独特なウインカーのスイッチ配置が採用されていました。 (数年前の新型車以降は国産車と同じ配置になっています)
左ウインカーは左手側のプッシュスイッチを押し、右ウインカーは右手側のスイッチを押します。そして、ウインカーを消すには右手側にあるキャンセルボタンを押す、という方式です。
左右のウインカーボタンもキャンセルボタンも親指で押した時に軽い手応え(クリック感)を感じられるようになっているのですが、、、
先日運転している途中で、ウインカーキャンセルスイッチの「クリック感」が無くなってしまったことに気付きました。
ウインカーを消す機能的には問題無いのですが、手応えが無いと消せたかどうか分からないし、何よりもとても気持ち悪いので、ちょっと見てみることにしました。
BMW R1200GS (2008年)の右側コンビネーションスイッチはこうなっています。
上から、セル(スターター)&キルスイッチ、グリップヒーター、ウインカーキャンセル、右ウインカースイッチです。
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右矢印のボタンを押すと右ウインカーが作動します。
(左手側にある左ウインカーのボタンと同時に押すとハザードになります)
ウインカーやハザードを停止させるのが、このキャンセルボタンです。
クリック感が無くなってしまっていますが、もちろん外観上は特に異常は見当たりません。
コンビネーションスイッチをバイクから取り外してみます。
バックミラーとブレーキレバーをハンドルバーに固定しているボルトを緩めて少しずらしてあげて、コンビネーションスイッチのカバーを外します。
カバーの固定ビスのサイズは、トルクスの T10です。
車体側とつながっているコネクタを外した上で、ハンドルバーとの固定ビス2本(サイズはT10)を外せば、コンビネーションスイッチがごっそり取れます。
取り外した、右コンビネーションスイッチ
予想はしていましたが、肝心のウインカーキャンセルスイッチの内部の様子を見るためには、このユニットそのものを分解する必要があることが分かりました。
一旦、元通りにバイクに付け直し、現状のままで我慢しようかとも考えたのですが、、、やっぱりクリック感が無いのは気になります。。。
内部構造が分からないままに分解し、いじくり壊して被害が拡大することが一番怖いので、Facebook上にある BMWバイクのグループで「コンビネーションスイッチの分解経験や内部構造をご存知の方はいますか?」と尋ねてみたところ、短時間にヒントになる情報を複数頂くことができたので、本格的に分解してみることにしました。
その前に、このコンビネーションスイッチを丸ごと交換することになった場合の価格を調べてみたところ、部品代だけで35,000円ほどと判明しました。
・・・この金額を意識しながら、分解修理にチャレンジすることにします。
さて、このコンビネーションスイッチのユニットを分解するには、T7という小さなサイズのトルクスレンチ(ドライバー)が必要になります。
T10以下のものは持っていなかったので、これを機に購入しました。
T2という極小サイズ~T20の11本セットです。 「いじり止め」トルクスにも対応しているので、欧州車のメンテだけでなく、パソコンなどをいじる時にも重宝しそうです。 (^^; |
まずはカバーを分離させて、
内部的には同じ形状の小型プッシュスイッチが並んでいます。 直径12mmほどの丸型です。
この状態でスイッチを押してみると、ウインカーキャンセルスイッチにはやはりクリック感が無く、ウインカースイッチにはちゃんとあるので、問題はこのスイッチ内部に起因するようです。
一般的に、クリック感のある小型スイッチは、タクトスイッチ(=タクタイル/タクティル/Tactile)と呼ばれます。
世の中には文字通り無数の種類のタクトスイッチがありますので、スイッチ自体が壊れて修理不能ならば、寸法などが似通った市販品を流用することも考えながら、不具合が生じているスイッチを慎重に分解してみました。
スイッチ本体を分解した途端、内部からバネが飛び出して来ましたが、(少なくともこの時点では)特におかしな部分は見当たりません。
黒いリング状の部品は薄いゴム製の防水防塵カバーですが劣化や破れなどは無く、そのお蔭でスイッチ内部は、中央に見える金属接点の状態も含めてとてもキレイです。
不具合の原因として、内部に小さなゴミや部品の破片のようなものが入り込んでいることも想定のひとつだったのですが、文字通り、チリひとつ入っていませんでした。
スイッチ内部中央の金属接点は2枚のリード(弁)状になっていて、分解状態では接触(導通)しています。
組み立てられた状態では白い樹脂部品(プランジャーと呼んでおきます)の中央内部に見える小さな「横棒」部分がスイッチ内部で接触している2枚の金属接点の間に分け入って切り離す位置になり(通常時OFF)、その位置から押し込まれると「横棒」が接点の間を通過してしまうために接点同士が接触する(プッシュでON)、というしくみです。
・・・文字で書いてもサッパリ意味不明かもしれませんが。(^^;
問題は、「クリック感」が本来はどのように生み出され、なぜ無くなっているのか、です。
この時点では、白い樹脂部品の外周にある小さな突起(爪)が摩耗や変形していることを想定し、拡大鏡(ルーペ)を使って細かく観察したのですが、、、どうもそういう事では無さそうです。
いろいろ考えたのですが答えが分からなかったので、隣の(正常にクリック感のある)スイッチも分解して違いを比べてみることにしました。
これは、「右ウインカースイッチ」に相当します。
正常品を分解したら、答えはすぐに分かりました。
正常品(左)のように、本来はバネが少し縮んだ状態で筒状パーツ(プランジャー)に嵌っていなければならないところ、不具合状態(右)ではバネが外れて伸びきって組み付けられていたのです。
正しくバネを装着したプランジャーをスイッチ内部にはめ込んであげると、この位置が通常状態になります。
プランジャー内の「横棒」が金属接点の間に分け入って絶縁(オフ)した状態です。
スイッチが押されてプランジャーの「横棒」が金属接点の「バネっけ」を乗り越えて通過する時にクリック感が得られ、プランジャー周囲に付け直したバネの力で押し込まれた状態から通常状態に戻るメカニズムになっていました。
・・・このブログ記事は、自分自身の備忘録の意味だけでなく、同じような問題に遭遇したどこかの誰かの役に立てるかも、、、という期待を込めて書いているわけですが、、、ここまでの写真と文字情報だけで、果たして自分以外の人に、このスイッチの構造が通じているかなぁ。(^^;;;
ホントは図でも描けば分かり易いのでしょうけれどね。
何はともあれ、問題のタクトスイッチにクリック感が蘇りましたので、コンビネーションスイッチとして組み直します。
組み立て前の集合写真。(^^;
もう2度と分解しないで済むのか、それともまたすぐに同じような作業をやるハメになるのか分かりませんが、せっかくなのでキレイに掃除しておきましょう。
スイッチ本体のゴム製の防水ブーツ部分は、直接紫外線や水分油分に晒されるわけではありませんが、劣化して裂けたりしないように、シリコングリスとかを塗っておこうかと考えました。
でも、グリスだとかえって塵や埃が付きそうだし、コンビネーションスイッチの全体的がほぼ丸ごと樹脂製ですからシリコン系の保護剤で磨いてヨシとします。(^^;
おかけで、ずいぶんピカピカになりました。
強いこだわりがあるわけではないので、シリコン系の保護剤ならば「アーマオール」でも何でも良いのですが、現在は「ポリメイト」を愛用しています。 ・・・一度買ったらなかなか無くならないから、ひとつの商品を愛用することになっちゃうだけです。(^^; |
この後、バイクに付け直し、ウインカーキャンセルスイッチの「クリック感」が見事に復活しました!!
コンビネーションスイッチの丸ごと交換ならば部品代だけで 35,000円かかるところ、小さなトルクスレンチセットの購入と、少量のポリメイトの消費で済ませることができて大満足です。
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【2019/7/18 追加写真】
貴重な投稿ありがとうございます。
返信削除BMWって国産とちがって組み付けが特殊ですね。
私もなにかと苦戦しているところです。😄
貴重な投稿ありがとうございます。
返信削除BMWって国産とちがって組み付けが特殊ですね。
私もなにかと苦戦しているところです。😄
コメントありがとうございます! はい、私もずっとホンダとヤマハしか知らなかったので、色々新鮮で面白がっています。 (^^;
削除教えて欲しい事があるのですが、カバーがどうしても外れません。T7のネジを3本外してもカバーが外れてきません。他に何かあるのでしょうか?教えてもらえたら助かります。
削除こんにちは。私が分解したときには「なかなか外れない」と思った記憶はありません。ブログには採用していない写真が何枚かあったので見てみたところ、T7のネジは4本のようです。
削除年式などの違いによって、ユニットそのものが私のものと同じとは限りませんけれど。少しでも参考になれば幸いです。 ご検討をお祈りしています!
返信ありがとうございます。後ろから見ると上部に2本、下部の穴の中に1本T7のネジがあります。確かに、まだネジで留まっている感触はあるのですが、部位を見つけれません。良ければ教えて頂けないでしょうか?写真とか掲載があれば助かります。すいません。
削除上記本文の最後に写真を何枚か追加しました。
削除すみません、バッチリ写っているものが無いのですが、、、正面から見た時に(ネジは裏面ですが)上端に2つと中央のグリップヒータースイッチの右上と左下に1つずつネジ穴が見えます。 それが T7ビスの穴なのかどうかは写真では判別できず、それについて明確な記憶も無いのですが。。。
たとえばユニットの裏面に貼られたシールの下にネジが隠れている可能性はないでしょうか?
何度もすみません。ありがとうございました。シールの裏面は分かりませんでした。ちなみに、この写真にもシール上部に穴らしき物が載っているので、この部位にネジがあったのでしょうか?参考に分解したいと思います。ありがとうございました。
削除こんにちは 岐阜の岩田と申します。初めまして(^.^)
返信削除GORIさんのブログは分かりやすくて、とても参考になります。
ありがとうございます。
突然のコメントでずうずうしいのですが、ウインカースイッチの分解の記事に絡んで
知って見えたらご教示お願いしたのですが、キャンセルスイッチの部位についてです。
実はキャンセルスイッチを左ハンドル側に増設または移設したいと思っています。
トグル式orプッシュ式の自動戻りSWを左ハンドル側に追加します。
(1)右のキャンセルスイッチのコードを分岐させて左側自動戻りSWに結線
(2)エラーメッセージが出たら右のキャンセルスイッチのコードを切断し左側の自動戻りSWに結線
このような野望を練っています。どうなることやら?
前置きが長くなってしまい申し訳ありません。
知りたいのは分解時のキャンセルスイッチのコードの色が判ればご教示お願いしたいです。
写真を拝見しましたが断定は出来ませんでした
勝手ながら、なるべくなら全分解したくないので・・(老眼が進んで見えにくく細かい手作業は厳しいですね)
僕はBMWに乗り始めて、かれこれ18年以上になります。
97年-R1100Rから2011年R1200GS(2年目)と乗り継いでいます。
長年Rシリーズに乗っていますが、R12GSになってからはリレーらしきものは無く
コンピュータのプログラム?で作動しているようですね
R11Rでは市販のリレーと入れ替えてキャンセルスイッチを使っていなかったので
左右独立が良かったのですが、R12GSは2年近く乗っていても慣れませんね
長文と判りにくい文面で申し訳ありません。
まったく急ぎませんのでGORIさんの暇つぶしで、ご返事頂けたら幸いです。
2018/05/03 岩田
岩田さん、こんにちは!
削除キャンセルスイッチの移設、面白そうですね。
ご質問の意図は、完全に理解しました。
キャンセルスイッチのコードの色は、「青地に白線」です。
青色のコードですが、全体に白いストライプが付いている、という意味です。
もうひとつの(右)ウインカースイッチのコードは、「青地に黄線」なので、それを意識して写真を見ると、納得して頂けると思います。
で、、、私の理解(半分は予想ですが)では、そのコードの配色は、車体側の配線でも同じです。
つまり、コンビネーションスイッチに繋がっている、車体側のハーネスを探せば、そこに「青地に白線」のコードがあるはずです。
それをGNDに落とせばウインカーキャンセル動作になると思います。
GNDに落とすだけのスイッチだと思うので、分岐しても特にエラー等にはならないと予想します。
・・・もちろん、保証の限りではありませんので、間違いがあったらご容赦ください。
慎重に実験してみて頂くのがよろしいと思います。
お役に立てれば幸いです。
こんにちは 岐阜の岩田です。
返信削除投稿しっぱなしで、お礼のレスが遅くなって申し訳ありません。
Gmailの隅っこに来てました。
ブログに投稿自体がほとんど経験無くて恥ずかしい限りです。
姓を名乗るのも変なんかな~
アドバイスありがとうございます。
ふむふむ、「青地に白線」のコードをGNDですね
トライしてみましょう!
まずは安物のスイッチで動作確認などなど
話が変わりますが、GORIさんの2008年GSと僕の2011ではブレーキ周りの仕様が
違うみたいですね
パッドピンに溝は無いみたいだし...
その後のベスラの感想もお聞きしたいですね
またちょくちょくと教えてくださいね(^^)では!
R1150R乗りの平山と申します。
返信削除故障(燃料タンク内のポンプ経路のチューブ外れでした)でしばらく乗っていなかった間に、ウインカースイッチの動作がおかしくなりました。右ウインカーが出なかったり、左ウインカーが消えなかったりで、クリック感も今ひとつなため、ハンドルスイッチの分解・清掃を思い立ち、ネットで調べるうちに、GORI-techさんのこのページに行き当たりました。
タクトスイッチの分解でお尋ねです。画面で見ると、上側の白いカバー?は「はめこみ」のようです(両端につめが見えるので)が、力わざで開けたのですか。それとも何かコツがあったのでしょうか。分解して元に戻らなくなるとそれこそ元も子もないので(過去に苦い経験あり)、分解清掃をちょっとためらっているところです。ご教示いただければ幸いです。
R1150R平山です。
削除その後、ハンドルスイッチを分解してみました。タクトスイッチ自体の動作(節度)に問題はなさそうでしたので、周囲を清掃のうえ、右ウインカー用及びウインカーキャンセル用のノブのみ、オークションで落札した類似系列のハンドルスイッチから取り出したものと交換しました。結果的にウインカーの不具合は解消しました。今回はスイッチ自体の分解までは必要ありませんでしたが、当サイトの記事が大いに参考になり、助かりました。ありがとうございました。
平山さん、こんにちは! 一週間前に頂いたコメントにお返事もしないままになってしまい申し訳ありませんでした! お問い合わせの「はめこみ」について、記憶では「簡単にはずれた(=力わざではない)」のですが、それを示す写真等が無いかと探しているうちに尻切れになっていました。。。
削除分解清掃と別のハンドルスイッチからのノブの移植で復活したとのこと、おめでとうございます!! 自分の創意工夫で不具合が治るのはとても気持ち良いですよネ。 私の情報が少しでも参考になったのであれば、それだけで私も気分が良いです。 わざわざご報告を頂きありがとうございます。 また何かの機会で情報交換ができることがあるかもしれませんのでそのときはよろしくお願いいたします。
京都の水谷といいます。先日立ちごけしてしまいホーンボタンがめり込み左ウインカーボタンが反応しなくなりました。
返信削除ツーリングの帰路だったので手信号で帰宅し、途方に暮れていたところこのサイトに出会いました。
代替パーツが中々ないので困っていたところ背中を押されて分解に着手しました。幸い、未使用の隠れボタン(オプション用?)があったのでそれを流用して修理が完了しました。
車種はF650GSでしたが基本的な構想は同じでしたのでお知恵が役に立ちました。ありがとうございました😊
水谷さん、こんにちは! せっかく「情報が役に立った!」とご報告頂いたのに、すぐにお返事できないままで申し訳ありませんでした。
削除もちろん私もネットで様々な情報や先人の経験を活用していますが、こうして「役立った!」と言ってもらえるのはとても嬉しいことなので、私もちゃんと感謝を伝えるようにしたいと思います!!
こんにちは 先日転倒し左のウインカースイッチが壊れて作動しなく困っておりました。形は正常ですがカチッと感がないうえ左のウインカーがつかない状態です。部品も高いので分解してみたいと思っていたところ、この丁寧な作業手順書を見ることができ勇気が湧きました。是非チャレンジしてみたいです。ありがとうございます。
返信削除