2019/04/17

地デジのアンテナをスペアナで測定してみた

先日ハイエースに取り付けた地デジ用のアンテナの性能を調べてみたくて、高性能な測定器を借りて測ってみることにしました。
借りてきたのは「Keysight N9344C ハンドヘルド・スペクトラム・アナライザ(HSA)」です。 
バッテリー駆動も可能なハンドヘルド型なのに 20GHzまで測れる優れモノです。
車載アンテナで受信した地デジ信号のローチャンネル(13~32ch)をこのスペアナで測定した結果の画像がこれです。 周波数としては 470~590MHzになります。

赤矢印の数字は私が書き足した地デジのチャンネル番号です。 (受信周波数の物理チャンネルであって、テレビのリモコンチャンネル番号ではありません。昔は同義でしたけどね。)

21~27chに連なっている7波は東京スカイツリーから10kWで送信されているNHKと広域民放(在京キー局)で、16ch は同じくスカイツリーからの「東京MX」(出力3kW)です。

18chは「テレビ神奈川」で、横浜(鶴見)から1kWで送信されています。 スカイツリーとは方角がだいぶ異なるのですが、十分な信号強度になっているところが無指向性アンテナの強みと言えそうです。

右端に見える 32chは「テレビ埼玉」で、浦和から500Wで送信されているものが微弱ながら受信できています。 カーナビのテレビでは、フルセグではなくワンセグになってしまいますが、ちゃんと放送を観ることが出来ます。

一番左の 14chですが、これは比較的近所にある、送信出力が3Wという小さな中継局の信号のようです。
写真は省略していますが、41~47chなどのハイチャンネルにもこの中継局からの信号がスペアナ上で観測できていました。
中継局の送信内容はスカイツリーと同じなのでカーナビのテレビでは自動的にスカイツリーからの強い信号のチャンネルが使われてしまい、この中継局からの弱い信号は視聴できません。
(ふつうの家庭用テレビに接続すれば、意図的に中継局のチャンネルを視聴することもできるのですが)

ちなみに、どの送信所からどのチャンネルでどの放送局の信号が送信されているかは、総務省のWebで参照できます。
地域ごとに異なりますが、関東地方については下記URLです。

デジタル中継局開局情報
http://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/bc/digital/menkyo/index.html

また、各送信所(親局、中継局)の受信エリアは「A-PAB(一般社団法人放送サービス高度化推進協会)放送エリアのめやす http://apab-tv-area.jp/」で調べられます。

さて、ハイエースに取り付けたアンテナでひと通りの地デジ電波が受信できていることは分かりましたが、試しに車外で、スペアナに取り付けた広帯域ロッドアンテナを使って観測したところ、、、信号強度は多少弱いものの、ひと通りのチャンネルの信号が観測できてしまいました。
この場所は元々の電波環境が良いために、ロッドアンテナでも十分に地デジ信号が受信できてしまうのです。。。  
なるほど、この電波環境ならば、カーナビのテレビを観てもフィルムアンテナとの違いが出ないわけだ。。。


ハイエースに取り付けたアンテナは無指向性であることが特徴であり、それが自分の狙いでもあるのですが、ロッドアンテナも無指向性なので、指向性のアンテナとも比較してみたかったので、小型の八木アンテナを探してみました。
強電界地域の家庭用として、5素子や8素子のものが各社が安価で販売されています。

 

私は日本アンテナ製の5素子のものを購入しました。

ハイエースに取り付けた ANTOPのアンテナの周辺で、指向性のある八木アンテナをスペアナに繋げて地デジ信号を観測してみて分かったのは、信号強度が最大となるようにアンテナの向きを決めるのはなかなか難しいということです。

家の屋根やビルの屋上などの見通しが良い状況では基本的に送信所(たとえば東京スカイツリー)にアンテナを向ければ良いはずですが、地上高が低く周囲にビルやクルマがあるこの状況では、送信所とはまったく違う方向や角度で最大の信号強度が得られ、数メートル移動したところではまた全然異なる状況になりました。
 送信所からの直接波ではなく反射波だらけということです。 以前のアナログ方式の地上波テレビの電波だったら、この場合、マルチパス干渉によるゴースト画像になるのですが、地デジは文字通りデジタル変調(OFDM)を採用しているため、その恩恵でマルチパスに強く、ある程度の強度で電波を受信できればキレイな映像として複号することができます。
・・・と、知識としては知っていましたが、スペアナとアンテナを振り回して、なるほど納得です。

ちなみに、反射波は偏波面も変わる(乱れる?)ようで、水平偏波なはずなのにアンテナを垂直にした方が信号強度が強くなることもありました。 (反射波間の干渉によるものなのかもしれません)
 で、改めて 今回ハイエースに取り付けた ANTOPのアンテナについて論じるとすれば、、、ゲイン(利得)がそれなりにある無指向性アンテナ、という自分の狙いにおいてはまずまず期待通りだと言って良いかと思います。

そもそも、無指向性で高利得を求めるのは困難なので、プリアンプ(ブースター)で嵩上げするのはやむを得ないと思われます。
ただ、山の陰など、明らかに地デジ電波が届いていないところではどうしようもないので、わざわざテレビアンテナを外付けすることが、価格対効果として有意義と言えるかどうかは、、、これからアチコチを旅行しながら検証していきたいと思います。
また次の機会があれば条件を変えて、、、たとえば別の土地に移動したり、別のアンテナに切り替えたりして、同様の測定をしてみたいです。